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病院船、出航せよ [フィクション]

先ほど、内閣危機管理室の学からその種の指令を受け取っている。

船長は判断に迷っていた。「直ちに出航すべきか」と言うことである。石垣島の島民の健康診断と二つのオペをしているのだ。

健康診断は今すぐ取りやめても支障はない。問題は二つのオペだ。一つは子供の怪我だ。こちらはあと一時間くらいでなんとかなる。

もう一つのほうだ。こちらはあと三時間はかかるだろう。厄介なオペであることには代わりがない。その上に、家族や親戚が立ち会っているのだ。

院長にその判断を仰ぐことにした。今回、この船は国内にとどまっていられ、緊急な災害に優先的に運用されるということになっている。国内外にとどまらない。

「院長、直ちに出港と言うことだが、・・・・。二つのオペは?」
「一方は、一時間で何とかなる.もう一つが、・・・・・。その家族も乗船しているし、・・・・。」といったきりである。

この前はフィリピンの地震と津波に派遣された。病院機能を丸ごと船の中に収めている。4つのオペ室まで備えているのだ。5000トン級の輸送船がつけられている。そっちと、こちらに12機の機能の違うヘリまで搭載されているのだ。

今回は国内と言うこともあり、輸送船を伴つてはいない。横須賀の岸壁に係留されたままである。もちろん、物資他の積み込みは完了済みにはなっているらしい。

先ほどから、「地震津波で甚大な被害があるのではなかろうか」とニュースが伝えられてきている。船長も、病院長も判断を決めかねているというところだ。

第一報を受け取ってから30分以上経過してしまっているのだろう。院長、船長の補佐をしている女性がいる。翼と名乗ってはいるが、れっきとした女性だ。女にしておくにはもったいない器量である。両方の意味を含んでいる。美人と言うことと、才覚があるのだ。

「そんなに迷っていることじゃないでしょう」と言い出した。「碇を揚げてすぐに出航すべきだ」「家族はそのまま同行させればよい。それ以外の人たちは輸送用ヘリが到達できる空港に一番近いところで、その空港に搬送すればよい」と言うのだ。

「急行しても、輸送船と合流できて、現地に到達するのに、丸一日以上かかります。輸送船が先に到達して救助他を執り行っていても問題はないはずですが、・・・・。」「指令に打診してみたら、おそらく、彼はそのことを想定済みにしているとおもいますけれど、・・・・・。輸送船はすでに目的地に向かって出航しているはずですよ。」

注 この部分はあくまでもフィクションです。今回の震災で病院が野戦病院化してしまい。本来の機能以上になってしまったことによりますけれど、3年以上も前にこの提案はしてあることになります。

高橋も駆けつけてきた。 [フィクション]

高橋も来た。
そうこうしているうちに、相対速度研究所から高橋も駆けつけてきた。おそらく、ジャンボを吊り上げた時点で危機管理室に移動を始めたものと思われる。久しぶりに学と一緒に仕事ができ、学生時代の懐かしさも手伝って会いたいという衝動がそうさせたのではなかろう。学は「高橋よくやってくれた。有り難う。」というと「良かった。良かった。」を繰り返すばかりである。感激のあまり言葉が見つからないのだろうか。少し落ち着いてきたらしく「指令に発破を掛けられた時はどうなるものかとヒヤヒヤでした。」「時間は迫ってくるし、結論は急がされるし・・・・・・。」「機長の提案があったから導き出せた結論です。」「二機のエンジンを止めて、もう二機のエンジンの出力を落すなんて考えもしなかった。あのままの状態では八方塞でどうしょうもなかった。」学だからこそ心の奥底を露呈して見せられるということかもしれない。「卒業してから大分会わなかったけれど変わらないなあ。」「元気で何よりだ。」お互いの健闘をたたえあっている所はスポーツ選手のさわやかさがにじみ出ているという雰囲気である。早乙女は「コーヒーが用意できています。召し上がりますか。」と差し出すと高橋も指令同様に少し大目の砂糖を入れてゆっくりと自分たちのしてきたことを反芻するかのように飲み込んだ。秘書の一人が【クス】と小さな声を上げて笑いをかみ殺しているではないか。多分、この三人のどこか似た所を発見したのだろう。その誰もが個性豊かで魅力に満ちた輝きを放っているが、コーヒーの飲み方は誰もが少し大目の砂糖を入れてゆっくりと飲み込んでいる姿はみんな同じである。何か瞑想しているかのようでもあり、夢を見ているようでもある。頭の中でさまざまな情報を立体的に組み立てているのかもしれない(巻末の付則文章(夢ナビノート)参照)。その作業にコーヒーが彩りを添えているのかもしれない。

水谷もまた新設の野辺山空港のどこかで熱いコーヒーを飲みながら、しばしの充実感にしたっているだろう。あの四人の関係はいつ見てもスッキリしている状態であることは誰の目から見てもあきらかである。かといって、この四人が共同して何かを実行するということはこれっきりにしてもらいたいというのが正直な実感だ。
彼らが手を組んで事に当たらなければならないことは恐らく危機的な状況意外は考えられないのである。お互いがコーヒーを飲みながらうまそうにタバコに火をつけて大きく吸い込んだ。仕事の後の充足感とともに満面の笑みを浮かべながら・・・・。「あの飛行機はこれからどうするのだろう。」「あのまま地元で展示して、航空事故の教材に使うのだろうか。」「展示室として利用されるのだろうか。」「幸、機体の大部分は国有地の中に納まった格好になっているではないか。」「取り付け道路や駐車場が整備できれば観光資源になりうるではないか。」などという会話が危機管理室の中で繰り返されている。今世紀最大の失敗としてアポロ13号のようなものになるのかもしれない。「人類が失敗を誇りに変えたふたつのモーニュメントが揃うことになるのになぁ。」いつものクセに早乙女は一人苦笑しながら「指令のあの顔はいつ見てもすがすがしいものだ。」と考えていた。
それはまさに一仕事を終えた時の男たちの笑顔に戻っていた。やがて、この街も薄暮から夜になりかかろうとしている。ネオンサインがビルデングの輪郭をしっかりと写しだし初めていた。学たちも重縛から解放されてそこらのスナックで祝杯を挙げるだろう。お互いの努力の成果を酒の肴にして・・・・・・。やがて、愛とさくらはいつまでも帰ってこない学にやきもきし始めるだろう。
その頃、ニュースは603便の救出と総理大臣の記者会見の模様と(オペレーション603)を大々的に報道し始めることだろう。やがて、夜のとばりの中に喚起に満ちた声が日本列島を包み込むことだろう。


その頃、危機管理室では [フィクション]

危機管理室の誰もが手を取って喜んだ。「大臣、私のオペレーションが終了しました。ご支援有難うございます。」学が言うと総理は「指令、有難うそして、ご苦労さん。」といって抱きついて学の肩を何度も何度も叩いた。それ以上は言葉にならないという雰囲気である。その目には光るものもにじんでいた。学の苦悩のことも全て知り抜いていたという感じである。きっと防衛庁長官が伝えたであろう、もうひとつの苦渋に満ちた決断を免れたと言う思いがそうさせているのかもしれない。「良かった、良かった。」と繰り返すばかりである。学の耳元で「記者会見に出席する予定になっているので失礼するょ。」といって離れていった。記者団にこのオペレーションを指揮した人はときかれるだろう。そうかといって、簡単にもらすこともないと思われる。今後のことは現地に任せよう学はそのように考えていた。細かな指図は彼らのモチベーションを阻害しかねない。また、私がでる幕でも無さそうである。指示しなくても現場は見事に機能したではないか。これが彼の現場学である。任せられるものは徹底的に任せる。そのために必要な情報は公開する。最終的な責任は自分が背負う。最近では、見かけなくなってしまった指導者のタイプだといえる。

 「熱いコーヒーを」といいかけた時、早乙女はすでに用意をして運んできてくれた。「本当に気の効く娘だ。」「その上に器量が良い。」「笑顔が何よりも良い。緊張した場面では相当癒される。」感心しながら短く立て続けに的確に表現するという方法でつぶやくと長官も「そうだなぁ。」大きくうなずいて見せた。ただ、学は現地からの報道と報告を聞きながら美味しいコーヒーに砂糖を多めに入れて、味わうようにゆっくりと飲みながら「大したけが人も出なくてよかった。それでも具合が悪くなって病院に行った人はいるが、長い間緊張状態が続けばああなるのは致し方ないと思うけど、・・・・。」誰かの同意を求めているかのようであり、独り言の様でもある。

 清水が「指令、よかったですねぇ、無事に仕事が出来て」「一世紀も前のモッコによるつり作戦をすると言い出したときは正直できるのかと半信半疑でしたよ。」と握手を求めてきた。その手を硬く握り返しながら「其れより釣りもしないお前がジャンボの釣具を作ると言い出したときは、いったいどんなものを作るのか興味深心であった。」と切り返すと「ジャンボの機体をみていたら、自然に湧いてきたのです。」と涼しい顔をして見せた。
「それにしても、軽いカーボンナノチューブで出来たモッコがあったから助かりました。」正直な感想である。指令も「私一人の力ではない、皆さんの知恵と力が一緒になったので出来た仕事です。有り難う御座いました.」とみんなの間を回って深々と頭を下げて歩いている。誰もが「指令、おめでとうございます。」「よくやりましたね。」と口々に答えているではないか。多くの人の命を救えたという感激と、指令への賛辞とともに自分たちへのねぎらいの言葉としているのだろう。世紀の大仕事に参画できた喜びを、満面の笑みを浮かべて体いっぱいに表現しているようである。「やった、やった。」と繰り返しながら喚起のこぶしを振り上げているものもいる。

追伸、「ジャンボを釣った人々、危機の管理学」ハアと3~4の投稿で完結する予定です。引き続きまして【面白中学の三年間とその後】ページ数90を投稿していく予定ですが、どこかで題名を変えなくちゃならないでしょう。
 

機長たちも降りてきた。 [フィクション]

まもなくして作戦部隊の水谷から「作戦ヘリの三機は野辺山空港に降ります。残りの仕事がある。他の機は当面、座間基地に帰還させて休養させる。」という報告が危機管理室に届いた。学は作戦部隊の各機に「有難うよく頑張ってくれた有難う。」といい続けた。
彼らの勇気には頭が下がる思いである。傾いた飛龍の甲板から飛び立って若いパイロットたちのことを思い出しながら、何度も何度も、「有り難う。ご苦労さん」といい続けた。いまだかって、誰も経験したことのないオペレーションを見事に実行して見せたのである。ジャンボから最後の乗客が下ろされ、乗員も全て603便をはなれた。その最後尾に機長が下りてきた。
皆が無事に避難できたことを確認してから三人のコックピットのスタッフと一緒におりてきたのである。ジャンボの機体に手を添えたかと思うと何かつぶやいているようである。「よく持ちこたえてくれたなぁ。」「其れではさらばだ。」とでも言ったのだろう。モニターの画面には言葉は伝わってこないのだ。何よりもぼそぼそ言ったのでマイクでも拾えないのである。口の動かし具合から読み取ることしか出来ないのだ。
長い緊張の連続だったので疲労感があるものの、その足取りは思いのほか軽やかであった。何よりも墜落という最悪の状態にならず犠牲者を出さなかったことが最大の喜びである。最初に支援部隊の人たちに挨拶を済ませると、作戦部隊の水谷の元によって握手したかと思うと抱きつて来た。「有り難う、困難な仕事を成し遂げた上に、乗客乗員を救出していただきなんとお礼を申し上げたら良いか。」殆ど涙声である。副操縦士も、機関士も握手を求めてくる。
「機関士さん、二基のエンジンを切るタイミングは絶妙でしたね。」「そう言っていただけるのはありがたいが、緊張の連続でした。一歩違えば大変な事態になってしまいかねないので、それにしても有り難う御座いました。」と深々と頭を下げた。機長は「危機管理室の指令にお礼をしたいのですが、電話なり、映像なりで中継できますか。」「それならこの回線を使用してください。」といって映像通信システムを指差した。「危機管理室、危機管理室応答願います。」
水谷の呼びかけを秘書の一人が気づいてモニターを見ると水谷と機長が並んで映っているではないか。「指令に繋いでいただけますか。機長がお礼を言いたいということですので、それに危機管理室の皆さんにもということです。」「大きなモニターがありますのでそちらに切り替えます。皆さんが見ているので続けてください。」
秘書が早速大きなモニターに切り替えると、満面の笑みを浮かべた水谷と機長が映し出された。「皆さん、この度は大変な事態を救出していただき大変有り難う御座いました。」「乗客乗員に成り代わり厚く御礼申し上げます。」と深々と何回も何回も頭を下げた。「機長よく頑張ってくれた。」総理も官房長官も、危機管理室の皆がいっせいにたちが立ち上がって拍手をして無事に帰還した祝福を送った。「指令に一言お礼を言わせてください。」「指令が見ていますので続けてください。」と答えると「大変な計画を実行していただきその上助けていただき有り難う御座いました。」しばらくのやり取りの後に機長は「指令は大変良いスタッフを持っていてうらやましい存在ですね。」というと「機長のアイデアが皆さんを救ったのですよ。」学は謙虚に機長をたたえた。「長い緊張が続いたのでしっかり休んでください。」と付け加えることを忘れなかった。

お母さんからの電話 [フィクション]

 しばらくして、お母さんから電話が入った。「テレビで見たのだが、学さん、大変な仕事を見事にこなしたらしいね。」「疲れて帰ってくるのだから、しっかり準備して待っているのょ。」「お風呂も沸かしておいて、若い人たちはシャワーで済ましてしまうが、リラックスする為にはなんといってもお風呂だょ。」」「お酒もよ。」「こんなことだったら、こちらの美味しい地酒を前もって送っとけば良かったと思うけれど間に合わなかったわ。」「うーん、言われなくても分かっている。」「さくらにしっかり念を押されているから大丈夫ょ。」「あんたちょっとおっちょこちょいの所があるから心配して電話をしているのよ。」確かに自分の親である。見ているところはちゃんと見ているのだ。

 「其れよりお父さんは元気。」「学さんの快挙をテレビで見ている。」「さっきから喜んじゃってひとりで飲み始めているのょ。」「学さんはたいしたものだとか。」「愛もいい人と一緒になれるとか言いながら、何かと理由をつけてお酒を飲むのだから、」「察するに、何か寂しさと嬉しさが入り混じった複雑な心境だと思うけれど、・・・・。」「お父さんにあんまに飲むなといっといて、」「ジャー、さっき言ったことを忘れないでね。」「学さん休暇取れるなら二人で出かけていらっしゃい。美味しいものを作っておくから、」といって電話を切った。
 母は母なりに気を使ってくれているのだ。家族の有難みは十分理解できているつもりである。「ねえ。ねぇ、愛のお母さんなんていっていた。」「さくらと同じことを言っただけだょ。」「それより、学さんのお母さんから電話くるのかなあ。」「私、今度のことはあまり良く知らないから説明できないし、どうしたらいい。」というとさくらは尽かさず「来ても、夜遅くなってからだと思うよ。」「多分会社で残業しているから、休みでも時々出勤しているみたいだし、この事件を知るのは早くて八時ぐらいのニュースか特別番組のいずれかになるんじゃない。」「それからでないと電話してくることはないはずだょ。」「働き者だもの、苦労して学さんを大きくしたのだから、今でもその性分が抜けていないらしい。」一気にまくし立てたかと思うと「もう、楽をしても良いのに、いつまでも貧乏性が抜けないのかしら・・・。」とポツリとこぼして見せた。
 「電話きたって、詳しいことを知らされていないのだからはっきりそういえばいいのよ。」「何も心配要らないじゃない。」「あんな大それたことをするなんて一言も言っていなかった。とでもいっておくしかないじゃない。」「事実、あなたも私もテレビを見てから知ったことだもの、」「知ったかぶりをするから、後からぼろが出てしまうのよ、知らないものは知らないのだから、」さくらは考え方がしっかりしているなぁと感じていた。


愛とさくらは [フィクション]

 愛とさくらはテレビの放送を見ながらジャンボが急ごしらえの野辺山空港に無事着陸したことを知った。「愛、学さんたちやったじゃない。」「大変なことを見事に成し遂げたのだよ。」興奮しながら言うと「これじゃ、食事用意しても直ぐにかえって来れなくなっちぅわ。」と心配し始めた。「学さん時の人になっちゃえばそこら自由に歩けなくなるわょ。」とさくらが言えば「大丈夫だって、学さんそんなに自分のことをひけらかさないもの。第一危機管理室の中は放送されていないじゃない。」「そうだよね。」さくらもなんとなく分かる。愛もその性格は見抜いている。
「学さんはそういう人だから私はほれたのだし、一緒になっても良いと考えたのよ。」「あら、今度はお惚気を言っている。」「さっきまでの落差は一体なんなのょ。」さくらにからかわれても別に変な気持ちにならないのである。「あなたたち一緒になってもちょくちょく押しかけてくるからね。」「今でもそうしているくせに、よく言うわ。」「其れもそうね。」和やかな雰囲気になってきた。
 でも、「モッコ作戦と釣り作戦てっていたけれど、学さんつりは出来るの。」「今回は大きな獲物をしとめたのね。」「ジャンボは魚とは違うは、料理しても美味しくないけれど・・・・。」「第一硬くて食べられないわ。」と冗談まで飛び出し始めてきた。 さくらも学がつりをしたところは見ていない。幼い頃からの記憶の隅をひっくり返しても学が田舎の池や川で魚を釣ったというは思い出せずにいた。「私も知らないわ。」と愛が言うと「だったら休みになったら皆で海につりに行こうか。」「伊豆や銚子の沖なんか良いかもしれない。」「たとえつれなくたっていいじゃない。」「潮風に吹かれただけだって、立派な気分転換にはなる。」「伊豆ならば晴れた日は富士山も見えるし、気持ちも晴れ晴れするだろうし、魚もおいしそうだよ。」「其れも良いかもしれないが、私、船酔いになりそう。小さな船は揺れが激しいもの。」「波の穏やかな日にしないと吐ちったら大変だわ。」現場は大変な状況というのにこちらはいたってのどかである。
台所に立っていった愛に「テレビでまもなく首相や危機管理室を放送するって言っているょ。」「記者会見でもするのかなぁ。」「速く来て見なければ、学さん出るのかなぁ。」「遠慮してでないと思うょ。でる必要性はないと思うけど、・・・・。」「ひょっとしてストレスで伸びたりしているかも、」とさくらが脅しにかかると「其れはないと思う、案外ストレスに強いのよ。でなければ、危機管理室の作戦指令なんてとてもつとまらないわ。」「でも、今回は大変なストレスだよ。何故、そんな事解かるの。」「だってお付き合いしていればそれくらいは理解できなくちゃ。」「ふ-ん、そういうものかなぁ。夫婦って、」「さくらったら、やだくて、まだ夫婦じゃないわ。」と恥らって見せるのである。「だってもうじき夫婦じゃない。」さくらにはまだ理解できない領域なのかもしれない。

ナイス・ランディング [フィクション]

 「指令、ただいま高度1800メートル順調に進んでいます。」作戦部隊からの報告が飛び込んできた。「細心の注意をして事に当たってくれ。」「時間は十分にある。」学は大きな時計に目をやりながら、「そろそろ薄暮になるので照明ヘリを上空に配置させる。」この作戦もすべて筒抜けにしてあるので照明ヘリも自分たちの出番が近いことを予測して既にエンジンは掛けられていた。
 学のオペレーションの素晴らしい所はなんといっても自分の出番が解かるように設定されていることである。優秀な野球の監督はリリーフピッチャーに力を発揮させるために大方の出番を言葉ではなく状況で教え込んでいたり、優秀な救援投手は大体このような状況になればお呼びがかかるだろうとブルペンで用意し始めるたりするらしい。野球に対してそんなに知っていると言うことはないが、其れと似ているように感じていた人たちがいる。早乙女も同じ事を感じ取っていた。前回の作戦を思い起こしていたのである。
 「照明ヘリ出動」「高度2500メートルでホーバリング、指示があるまで高度維持。」「作戦部隊をしっかり照らし続けてくれ。」【了解】という言葉と供に照明ヘリがテーク・オフして行った。引き続き作戦部隊からジャンボの高度が伝えられてくる。「指令、高度800異状なし」「バランス、異常なし。」「高度600メートル」「高度300メートル」「同じく、100メートル」「50」[30]学は祈るような気持ちで見つめていた。この頃になると饒舌の清水もモニターに釘つけにされたようで劇場中継は小休止していた。危機管理室の誰もが火災だけは起きないようにと考えていた。「野辺山空港にジャンボ着陸しました。」機長からも「ナイス・ランデングでした。少々の雑木はクッションの役割をしてくれました。」と弾んだ声が飛び込んできた。
「モッコの切り離し開始。」「OK」次に釣具様のものもヘリコプターから切り放たれてロープがジャンボの機体の上でバウンドした。この事は事前にジャンボの乗客につたへられていたのでそんなに驚くことは無かったが縄自体でさえ相当な重量があるので機内では大きな音となった。乗客たちはこの音を聞くなり「万歳」と叫ぶもの「助かった。」声を上げる者「よく頑張ったね。言うことを聞いてくれてありがとう。」「えらかったね。」子供たちの頭をなでたり、声をかけている母親など各人各様である。明子もその大きさに驚いたものの、「これで助かったのだ。」という実感がこみ上げてきた。幾筋もの涙がほほを伝わっているがハンカチで拭くことさえも忘れている。
一呼吸おいて機内放送がされ「病気の人、けが人、子どもや年寄りの人が優先的に下ろされること、比較的元気な人は乗務員とともに救出作業に手を貸して下さい。」というものだった。
「救出作戦終了」作戦部隊の水谷隊長から報告が弾んでいた。「おめでとう、そして、ご苦労さん。」「難しい仕事を見事に実行してくれて有り難う。」と学が答えた。「指令、そのことはお互い様なのでいいこなしでという事にしましょう。」なんとさわやかな関係だろうか。
 早乙女はこんな関係がうらやましくて仕方がないのである。この分だと火災が起きることは無さそうである。非常口やドアが開いて避難用のシレーダーが下ろされ次々に乗客が降りてきた。避難場所に着くなり座り込んでしまうもの、抱き合って喜でいるもの、具合が悪くて医師の診察を受けるもの、救急車で近くの病院に運ばれ者様々光景が映し出された。「もう飛行機はこりごりだ。」「それにしてもよくこんな大それた作戦を実行したものだ。」「いったい、この作戦を立案して実行した人はどういう人なのだろう。」と感心している乗客もいた。比較的元気な人は地元放送局のテレビのインタビューに答えている。「てっきり助からないと思っていたが、命拾いした。」「そうだなぁ。これからの人生は気楽に行くことにしよう。」「あわてず、あせらずな。」「のんびりが、一番ということだな。」と年寄りグループ旅行の人たちが話している。


清水独演会 [フィクション]

 危機管理室でも、この救出作戦は大きなモニターに映し出されている。清水もこの段階になればすることがないので、先ほどから一つのモニターを確り覗き込んではいるが、静かに見ているということはない。彼の独演会になろうとはだれも気が付いていなかった。
「そのために日夜訓練をしているのではないか。」「水谷あわてるな、時間は十分ある。ゆっくりでいいぞ、頑張れよ。」自分がそこにいるかのように、「後はパイロットの技量が試されるだけだ。」「バランスを崩さないように、同時に降りてこい。7機一緒だ、息を合わせろ、よし、そうだ、うん、そうだ。いいぞ、その調子だ。」独り言とはいえみんな聞こえている。
 ひょっとするとマイクが彼の声を拾ってジャンボや作戦部隊に聞こえてしまっているかもしれない。「あれじゃー、まるで清水独演劇場という感じゃない。」「彼は一人芝居の役者に向いているんじゃないかしら、」「そうね、私もさっきからそう思っていたわ。」「腹話術なんてむいているかもしれない。人気者になる要素はあるかも、・・・。」女性スタッフに笑われていることなど何処吹く風である。性格と言えば其れまでであるが、危機管理室や作戦部隊他の緊張を和らげる効果は十分ある。「これを意識的にやっているとしたらたいしたものだが・・・・・??」と学も感心した。


高原野菜を運ぶトラックの運転手たちは [フィクション]

 近くの国道や幹線道路の車は前方3キロ地点で封鎖され通行止めの状態がつついていた。高原野菜を積み込む手はずで大坂から大型で駆けつけた運転手の南も近くのドライブインで待機するほかに方法はなく、携帯で会社と連絡が済んでからはきようの運行はあきらめるほかなしと決め込んでいた。
「おーい、こうなったらこのドライブインはいつも利用しているので顔が利くからここに止めさしてもらって、缶ビールとつまみを買ってきていっぱいやりながら見学しよう。」というと同僚の若い運転手は「場所も良いし、よく見えるところだし、どうせ仕事は無理だからそうするしか無さそうだ。」「ドライブインだって通行止めが解除されなきゃ営業にはならないだろう。」と同意した。
 南がポケットから三千円を出して「これで冷えたヒールとつまみを買ってこい。」「どちらかの車を見える方向に向けて今世紀最大のジャンボ救出劇を観戦させてもらおう。」「こんなチャンスはめったにないことだし、ついでに観戦料はいらない。」「ラジオでもつければさながら野球場にいるようなものだ。」「わからないことはニュースが解説してくれる。」
 当事者で無ければまったくのんきなものである。「救出されても国道が通れるようになるには時間がかかるので疲れたら車で眠ることにしよう。」二人は車に移動して見やすい方向に並べ替えすと一台の車をロックして南の車に乗り込んできた。「おい、それにしても良く吊り上げたもんだなぁ。」と感心した様子である。
よその会社の人たちも大体二人か三人でこの仕事をしているみたいで、運転手仲間が思いつくことは大方一緒である。冷えた缶ビール、あるいは日本酒の一合のタイプとつまみを持ち込んでドライブインシアターの雰囲気になってしまっている。口々に「こんな一世紀も前の作戦しか救出する方法が無かったのか。」「それにしても切れたタコの状態のジャンボをよく捕まえられたものだ。」「おい、まもなく降ろされるみたいだぞ。」幸いこのドライブインはジャンボが下ろされる地点より少し高台になっているので駐車場から良く見える様になっていた。「だいぶ高度が低くなってきているぞ。」「ジャンボのエンジンは止まっているらしい。」「燃料は捨ててしまってあるのか。」「火災が起きなければよいがなぁ。」口々にいろんなことがささやかれていた。

 ドライブインに待機させられたほかの会社の運転手たちも、まもなく急造の野辺山空港にジャンボが着陸するというので出てきては感想を言い合っている。こうなれば、ドライブインの経営者や、従業員まで仕事どころの騒ぎではない。「それにしてもたいしたことをしたものだ。」感心するもの「ジャンボをつっている網はどうもカーボンナノチューブという新素材で出来ているらしい。」「軽くて丈夫らしい。俺達の仕事にも将来採用されるのだろうか。」とか。「最初は座間基地からファルコン6機でスクランブルをかけたらしいぞ。」「レーダーで補足出来なかったのだろうか。」「レーダーでわかったとしてもヘリコプターが来なければ今度の作戦は出来なかったではないか。」「何でも音信不通なっていたとか言っていたぞ。」「どうやって連絡をつけたのだ。」「無線でも復旧したのか。」「そうじゃない携帯と手信号などで会話したらしい。」と先ほどまでテレビでやっていた情報を伝えてくるものもいる。
「おいら仕事は出来ないが、こんな現場を見さしてもらえるのだから、今日のところはいい話のネタをつかんだというものだ。」「会社に帰ったら自慢話が出来るベー、」「こともあろうにジャンボがヘリコプターのように着陸するなんてことは無いのだから、・・・・。」といえば。別の運転手は「世紀の救出劇を目の当たりにしたのだからなぁ。」まったくいい気なものである。


地元の騒ぎは [フィクション]

 炊き出しの婦人部隊もおよその緊急食料は確保されて何時でも届けられる体制が整っていた。熱い味噌汁も自衛隊の野戦用のジャーに詰められスタンバイしていた。村役場の職員が自動車に詰め込む手はずになっている。その車にも急ごしらえの緊急車両とかかれたステッカーが大きく貼られているだけだ。おそらく、ゴム磁石の貼り付けるものに紙を張ってマジックで書かれたものと推測できる。
「ご苦労様です。」若い職員が入ってきた。数時間前、ここに炊き出しの材料を届けに来た若者である。そのときは確かステッカーは貼られていなかった。役場に帰ってから急いで作られたものである。「こんな炊き出しはこの際これ一回にしてもらいたいものだ。」というと「本当にそう思うよ。」と同意するしかない。「でも、ニュースを見ているとたいしたことにならなくて済みそうです。」といいながらお結びや、味噌汁や、紙コップやらを手際よく自動車に積み込みながら笑顔を振りまいていた。
「まったく、大した作戦にたち合わせてもらったものだ。」年配の婦人が言い出した「まったくだ。」「おらこの年まで飛行機を魚のように釣りするなんて考えても見なかったこと無かったで、驚いている。」まったく正直な発言である.「一段落したので、お茶でも飲みながらテレビをつけてみるベー。」リーダー格の婦人の提案に「そうだ、そうだ。テレビを見よう。」と口々に賛同するものが多かった。

 広間にお茶と漬物が用意されていた。この地方で時々、十時三時の毎に展開されるお茶休憩の雰囲気になってきた。てんでにお茶碗を持ちつつもテレビに映し出される映像を食い入るように見守っている。この地点からは外に出てみればどうなっているか確認できるが、テレビを見れば解からないことは解説がついているので理解しやすくなっているのだ。
「ここは電波望遠鏡の近くではないか。」「あそこにそんなに広い場所はあったかしら、」地元の人でも普段関心を持ってみていないと、生活に直接影響のない情報はストックしていないのである。「おら、先日孫と一緒にあそこを見てきたんだ。」「大した施設で何でも地球以外で出している電波や、宇宙線、を観測しているそうな。」「まったく、大変な時代になったものだなあ。」「小さい頃誰もこんなこと考えも至難だ。」まさに実感である。また、外は警察車両がサイレンを鳴らしながら走っている。テレビではまもなくジャンボが草地に下ろされるのではないかと報じ始めていた。「うまく着陸できればいいが、火災になったら大変だなぁ。」「テレビでは燃料は全て捨ててあるといっているがなぁ。」

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